GNO2及びGNO3 連邦 情報部 こっそり日記 バックアップ

Yahoo!ブログから移籍。2007/5/23(水)から2016/7/2(土)まで。現在 http://gno.blog.jp/

小説4巻「マーズ・コンタクト」[ガンダムAGE]

キオのゲーマー設定が活きる小説版

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 フリット編の第1-15話、第一世代を前後編2巻(計189+285、474P)で
 アセム編の第16-28話、第二世代から28話のみ除き、第3巻(256P)で描いてきた小説版ですが
 アセム編ラスト+キオ編の第28-39話を全364Pのボリュームでお届け。
※放映中の40-49話は「三世代編」。

 まず例によって旧作ガンダムのパロ、オマージュ台詞が多いので以下略。
 地球四割が制圧下されている状況下での冷戦理論など、どうにもならないところもそのままです。
 従って話の破綻が一切ない作品を求めている方にもやはり向きませんし
 その点で、お勧め作品と言いかねる面があるのも相変わらず。

■キオとウェンディに踏み込んだ描写
 小説版に一貫して言える事ですが、キオとウェンディ、彼らを取り巻く大人達の懸命さが印象的。
 小説版フリットとアセムもそうでしたけれど、見ていて一生懸命なんですよね。
 自分にできる事を精一杯やろうとしている事が伝わってきますから
 見ていて応援したくなります。

 今回は「フリットのクーデター」「ヴェイガンの地球侵攻」の二つで世界情勢が激変してしまったので
 その描写に割いた分、フリットやアセムほど強調して描かれてはいませんが
 イゼルカントに対し少年らしい希望を叫ぶシーンはまさに主人公。
 こうでなくっちゃと思わせます。

 彼の設定の一つ「ゲーマーである」ことの害だけが強調されていないのもポイント。
 考えてみれば、1巻からもラーガンやデシルを通して「ゲーマーにもよい面と悪い面がある」ことも
 語られてもいるんですよね。
※ゲームが大きく関わった作品である事を踏まえてでしょうか。

 一方、前前巻主役のフリットが「アセムの死でがっくり老け込む」展開や
 その事が多方面に波及するなど、フリットのアセムへの想いが非常に強調されているのもポイントで
 1-3巻を通しての「フリット・アスノ」から良くも悪くも変わってないですし
 ホント、主役が主役をしています。
 
 また、基本的に本編を踏襲しつつ、例によって小説版として再構成してパラレル化してますが
 色々な視点を持つキャラが解説役に回る事で、より解りやすくなっています。
 視点、価値観が違うので、同じ事でも印象がまるで違いますから。

※後述する「ドレイムス司令」などが端的な例で、彼の主観のパートでは実直な現場主義者に見えますが
 ユノアパートでは、そんな彼も「自己満足」と切り捨てられています。
 実際、各地の動きは様々ですから「市民の為」だけなら
 色んな手段があったと解るわけですしね。

■心情が語られて印象が変化
 心情が語られたことで、特にドレイムス(ナトーラを艦長に任命したキオ編2話目の司令官)と
 ザナルド、二人の前線司令官の印象が好転しているのもポイント。
 本編では殆ど出番がなかったユノア(アセム妹)も活躍。

 ヒロインも、人手不足の船という環境とフリットへの想いが描かれ強く関わったエミリー
 同級生から軍人、AGE-2専属オペレータという「相棒」になり、二人三脚でアセムと戦ったロマリーに続き
 ウェンディも「ゲーム仲間として、自分はキオがどういう人なのか知っている」とし
 一般人の視点から世界観解説もこなすマルチっぷりで活躍

多様な視点とフリット

 また、誰よりも「多様な視点」を活かして表現されたのはやはりフリット
 ヴェイガンと内通した連邦大統領に対しクーデターをしかけ、更に一時的に「粛清委員会」を設立して
 連邦を綱紀粛正し、すぐさま解散し政治は議会に返還。
 自身は軍総司令に専念し政治には口出しせず。

 軍改革の終了後、政界への移行を考えていたものの、その最終段階でアセムが戦死。
 後継者を失ったフリットはそのまま引退し改革は半ばで終わる。

 引退後、軍はMS開発の「ガンダム頼み(個人頼み)」を改め、技術者チームによる開発体制に移行。
 ガンダム計画は縮小し、引退したフリットは細々とAGE-3を開発する。

■多様な視点
 以上の事態を、フリット自身の視点、後世の歴史家が描いたらしい視点、現場軍人ドレイムスの視点
 一般市民であるウェンディの視点、やや事情を知る一般人ウットビットの視点
 アセムユノアの視点。

 等など複数の価値観・視点から描くことで、フリットへの理解を深めさせようとしているのも印象的。
 主なものは糾弾、老害、改革失敗の余波など、彼への罵倒が続きますし
 一方、前巻含めフリット自身の奮闘も描かれています。

 そして「ここ」を考えるのが、小説版AGEシリーズの面白いところだとも思うのです。

 アニメ視聴者に「殲滅主義の老害」「キチガイ」「戦争好き」などとも揶揄されていますが
 それがそのまま作中に現れてきていますし、それが正しいという見方もありますし
 それだけではないのも解るのです。

 フリットは葛藤して生きてますが、彼が他人を間接的に殺し罪を重ね憎悪されていることが確かであっても
 相応に社会的に貢献しているとも思えますから、一概に罰せられるべきとは思えないのですよね。
 誰も事態を打開できない以上、結局フリットの行動は有意なのも確かです。
 ヴェイガンが和平に応じるなんてのは甘い見方にしか思えませんし。
 
■個人的に
 結局、人間「努力や犠牲を払えば何でも成し遂げられる」訳ではありませんし
 誰もが合理的に考えたり、合理的に行動できる訳じゃありませんし
 誰もが義務に対し懸命な訳でもありません。

 それなら世の中もっと上手くいってるはずですし
 かといって、諦めるだけで済ますほどつまらない世の中とも思いません。
 という、悪く言えば灰色、よく言えば清濁併せ呑む価値観が本作には透けて見えます。

 そういう考え方は好みですね。
 好みだからそう見えてるだけかもしれませんけれども。

次巻への再確認

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 AGE-2、左腕両脚欠損し頭部損傷し全身ズタズタですがフラグでしょうか。
 ダメージから言えば、本編39話終了時のAGE-3とほぼ変わらないくらいズタズタにされています。
 ゴールドアローウェアという前例もありますし、もしや。

 誰も使いこなせいという理由で倉庫でほこりを被っていたダブルバレットウェアを……とか
 アルティメスウェアとかそういう展開になったらそれはそれで。
※AGE-2の後継機は存在しないという前振りしてるので、ウェアもそのまま残っている可能性が高い。

■キオの着地地点
 イゼルカント様、キオ相手に戦闘論戦共に完全敗北してしまいました。
 本編でも「否定されたからキレた」という側面があった訳ですし、ある意味同等。
 問題は「キオの言葉がどこまでイゼル様に届いたか?」「レギルス敗北を見届けたヴェイガン民の反応」。
 ここからどう狂うか、ヴェイガン市民にまで波及するのか。

 そして「現実的じゃない」としてイゼルカント論を否定したキオが
 どう「現実的な」着地地点に進むのか。

 本編と本筋では同じなのでしょうが、話の構成、キャラの造形が深められていることから
 その相違点を楽しむことも含め非常に続きが楽しみですね。

■イゼルカントの「選別」
 なお本編でも特に語られそうにない「選別基準」ですが、小説でも言及には至らず。
 もっともイゼル様の説明も本編通り曖昧ですから、その上で「科学のかの字もない」と一刀両断し
 疑似科学、社会的ダーウィニズムファシズムと唾棄されていました。

 要するに「動物が進化していくように、社会という仕組みもまた、理想形に進化していくもの」として
 その思い込みを疑似科学で補い、独裁権力によって強引に執行する
 という無茶苦茶なやり方、ってところでしょうか。

 ゼハートさんどうするんでしょうコレ。